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四国遍路に関する心理学を中心とした文献研究
by 邱琡雯, 2019-09-19 08:02, 人氣(1032)
南山大学紀要『アカデミア』人文・自然科学編 第 13 号,99―122,2017 年 1 月
 楠本和彦・境 徳子
本稿は,①四国遍路に関する心理学を中心とした先行研究のレビューを行うとともに,②境(2016) を評価し,四国遍路に関する諸研究の中で,境(2016)がどのような位置づけやオリジナリティをも つかを探究することを目的とした。  まず,四国遍路に関する心理学による研究,語りを主なデータとした研究について,その目的や方 法の概要を記すと共に,以下の観点から,それらの先行研究と境(2016)との関連を探った。その観 点は,①四国遍路者の遍路前と遍路後の心理的変化への注目,②四国遍路における自己過程・体験過 程に関する注目,③四国遍路に関する背景要因の遍路者にとっての意味に関する注目,④インタビュー データの質的研究,⑤研究者自身の巡礼体験の有無,であった。境(2016)が先行研究と共通するのは, ①四国遍路者の遍路前と遍路後の心理的変化や②四国遍路における自己過程・体験や③四国遍路に関 する背景要因の遍路者にとっての意味という心理学的なテーマに焦点を合わせた研究であるという点 であった。また,④遍路者のインタビューデータの詳細を記述し,そのデータを基に,データから離 れずナラティブ分析を実施している点には,境(2016)のオリジナリティがあると考えられた。しか し,⑤境自身は,四国遍路体験を行っておらず,自らの巡礼体験の身体的・心理的実感に基づいた考 察を実施できていない点には,限界があると考えられた。  続いて,四国遍路に関する心理学的トピックスについて,四国遍路の①背景要因と②心理学的効果・ 心身への影響の観点から,先行研究および境(2016)を検討した。境(2016)は,この両観点の上位 項目において,インタビュイーの語りがあり,それらについて検討がなされていた。境(2016)は, 3 名という少数のインタビュイーのデータに基づいた研究であり,限界をもちつつも,ある程度には 広範な心理学的トピックスに関するデータを収集しており,その検討がなされていると考えることが できた。また,他の先行研究では詳細な検討がなされていない点について,詳述・検討できている点 があり,それが境(2016)のオリジナリティであると確認できた。しかし,考察の深化などの点において,今後の課題があった

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