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植民地朝鮮における日本系宗教に関する思想史的研究
by 邱琡雯, 2017-08-03 11:19, 人氣(1407)
研究分野思想史
研究機関立命館大学
特別研究員諸 点淑  立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
研究期間 (年度)2007 – 2008

前年度の研究に引き続き本研究は、植民地朝鮮における日本系宗教の「社会事業」活動の検討を通じて日本系宗教の「近代性」を究明することである。前年度の成果である日本仏教(真宗大谷派、浄土宗)の調査結果を踏まえて、本年度は、日本系新宗教の「天理教」に焦点を当てて、日韓にわたる朝鮮総督府関連史料の収集、天理教関連の史料調査を実施した。植民地朝鮮における日本系新宗教の布教活動および社会事業活動は、日本仏教と比べその活動自体も遅れて、総督府の支援も恵まれてない状況のなかで社会事業が行われた。それゆえ、朝鮮総督府とかかわる公式的な史資料の確認も日本仏教と比較すれば豊富な状況ではなかった。周知のとおりに植民地朝鮮における日本仏教に関する先行研究は、日本系宗教の布教活動から読み取れる「植民地的」特質、つまり「侵略性」に重点をおいて論じてきた。天理教の社会事業の場合は、植民地朝鮮へ単身で渡ってきた個人布教者により展開され、1920年代後半にはいってから本格的な社会事業活動が実施されたが、社会事業施設の運営では朝鮮総督府によりも天理教教団本部からの支援が多かった。そして日本政府の支援を背負って社会事業を実施した日本仏教の社会事業と違って、天理教を含む日本系新宗教の活動は「邪教的存在」として朝鮮総督府の禁圧のなかで行われた。こうした相違たる状況から行われた日本系新宗教の社会事業活動の「近代性」というのは、前半の活動においては「文明的」近代性、宗教的性質が随伴された「普遍的」近代性がうかがえるが、それは韓国併合とともに、1930年代後半になっていくと、「帝国主義」的「近代性」が強く表出されることとなる。このことは日本仏教の社会事業の近代性からも確認できたように、「慈善」に基づいた社会事業は、帝国主義と結合され再構築された「慈善」であって、これが実施する側に内在化され朝鮮人に実施されることとなるのである。つまり「植民地権力」「宗教権力」という「近代権力」下で創出できた社会事業であったといえよう。
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