近世女性の西国三十三カ所巡礼 : 巖佐由衛の「西国道の記」
by 邱琡雯, 2019-09-27 16:02, 人氣(1462)
交通史研究 55(0), 23-41, 2004
日本学術会議協力学術研究団体 交通史学会柴 桂子
近世の西国一二±一.カ所巡礼の研究は、 故田中智彦氏によ
って精力的に行なわれ、 その成果が発表されている。
近世女性の西国三十三カ所巡礼については、まだ史料が
それほど多くは掘り起こされていないため、研究はあまり
進んでいない。
近世女性の西国巡礼の記録は、 他の神社仏閣参詣や名所
旧跡をたどる旅の中で西国三十三ヵ所のうち数カ所を訪れ
たものは何点も見出せるが、 全行程の記録は筆者の手元に
は四点しかない。 一点は青柳周一氏によって滋賀大学経済
学部附属史料館研究紀要第三六号に発表された『自芳尼〔
↓ひえず
「西国順拝名所記」(こ』である。 もう一点は『日吉津村
』
誌に翻刻された出雲国母里(島根県能義郡伯太)町の西
たひのみちくさ
村美須の旅日記「多比能実知久佐」の前半に、 西国三十三
ヵ所の巡礼が記されてあり、 さらにもう一点は備前国北方
ロこ
村(岡山県和気郡吉永)町の武元はなの「西国巡礼道の記」
いわさよしえ
である。 それらに加え、 今回出会った史料が巖佐由衛のら
「西国道の記
」
である。 巌佐由衛の「西国道の記」は日並
みの旅日記であり、 別に表紙に「西国道中日記小遣之扣
帳」と書かれた六〇丁の小冊子があるため、 二冊の書物か
ら西国巡礼の様子をかなり詳しく読み取ることが出来る。
それらから、 行程、 参詣地、 同道者、 宿泊地、 宿代、 買物
などのほか旅の中の出来事や、寄り道、 女性の旅の苦労な
どを読み取ってみたい
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